わたくしごとをひとつ

あたしの彼が家に挨拶にきた。
実家にはちょくちょく泊まりに来ていたりしたので
ハジメマシテではなく、結婚のお願いの為の訪問だった。
朝から父は大リーグを見たり、座椅子に座ってグーグー寝ていたりと
いつも通りのマイペース横丁を突っ走っていたが
彼が来る時間に近づくにつれて、ウロウロと歩き回ったり
台所の換気扇の下で、タバコをプカプカやる回数が多くなった。
彼が到着すると、ドウモドウモと言う感じで
なんとなく和やかに「結婚お願い会」は始まったが、この会は
「結婚をしたいと思います」という言葉が
あるんだ、あるんだ、あるんだよ〜と、先の見える会なので
テーブルに向かった4人は落ち着きがなく
父は照れる余り、母にイチャモンをつけて母を切れさせていた。
あたしはそのやりとりがうざい上に
「早く黙れ!!」と思っていたので、
「じゃぁあの、早速なんですが…」と切り出した彼を神だと思った。
言葉の内容はわたしも緊張していてあまり覚えていない。
訥々と、ゆっくりと、横で喋っていた。
「幸せにしていきたい」という言葉は覚えている。
なんだか泣けてきた。感動したんだろうか。
「この親の子供」ではなく
「この人の妻」になるんだなと思った。
言葉が終わった時、「よろしくお願いします」と
親は言っていた。母は涙ぐんでいて
父はにやけていた。「ふつつかな娘ですが」と
テレビみたいなことを言っていた。
それから4人で食事をしてモソモソ話して
4時ごろに解散になった。


二人になって、今更ながらお互いのことを話したりして
サティに行きがてらドライブをした。
穏やかな一日だった。